純粋想起を招き読者の記憶に残る記事の作り方

「毎日一生懸命記事を書いているのに、なぜか読者の心に届かない……」

こんな悩みを抱えている方は多いのではないでしょうか？

実際、自社のWebサイトやブログ(オウンドメディア)を運営している企業は多いものの、その成果に満足している担当者は少ないのが現状です。

記事へのアクセス数は増えているのに売上につながらない、SNSでシェアされる数は多いのに会社名が覚えてもらえない……。

そんな課題を抱えている方に向けて、この記事では「読者の記憶に残る良い記事」の作り方を、実践的にお伝えしていきます。

良い記事とは？ ～ビジネス視点での定義～

ビジネスの視点から見た「良い記事」とは、「会社の売上に貢献する記事」のことです。具体的には、以下の2つのパターンがあります。

• すぐに成果が出る記事：問い合わせや商品購入につながる記事
• じわじわと効果が出る記事：会社や商品が自然と思い出されるようになる記事(これを「純粋想起」と呼びます)

たとえば、システム開発会社の場合を考えてみましょう。

「システム開発会社を比較する」という記事から問い合わせが来るのが1つ目のパターン。技術に関する深い知識を発信し続けることで、「システム開発のことなら、あの会社！」と思い出してもらえるようになるのが2つ目のパターンです。

記憶に残る記事の3つの特徴

現代は情報があふれすぎている時代です。

「ちょっと役立つ程度」の記事では、残念ながら読者の記憶には残りません。では、どんな記事なら読者の記憶に残るのでしょうか。ここでは、実際に成果を上げている記事から見えてきた3つの特徴をご紹介します。

1つ目は「仕事で何度も使える」記事です。

たとえば、Googleが公開している「SEOスターターガイド」は、Web担当者が仕事中に何度も開いて確認する定番資料として知られています。このように、仕事の手順書やマニュアルのような形で、実務で繰り返し使える情報を提供することで、自然と読者の記憶に残っていきます。

【参考】
検索エンジン最適化(SEO)スターターガイド(Google for Developers)

2つ目は「長年の経験から生まれた深い知見がある」記事です。

ネット上には、他のサイトの情報を集めただけの薄い記事があふれています。そんな中で、実際の経験や試行錯誤から得られた深い気づきを伝える記事は、読者の心に強く響きます。

たとえば、SEO専門企業のMozが公開している「SEO入門ガイド」は、20年以上の実績を持つ企業だからこそ書ける内容が詰まっています。そのため、世界中のWeb担当者から支持され続けているのです。

【参考】
Beginner's Guide to SEO (Search Engine Optimization)(Moz)

3つ目は「常識を覆す新しい発見がある」記事です。

「○○は当たり前」と思われていることに、「実は違います」と新しい視点を示せる記事は、読者の記憶に強く残ります。ただし、この場合は必ずデータや具体的な事例で裏付けを示す必要があります。思いつきや憶測だけで常識を否定すると、逆に信頼を失ってしまう可能性があるためです。

良い記事がもたらす3つの価値

良い記事を書き続けることで、単に読者の記憶に残るだけでなく、さらに大きな価値が生まれてきます。

具体的には、

• 専門家としての信頼獲得
• 仲間づくりのきっかけ
• 社会への貢献

という3つの価値です。

それでは、先ほどの3つの価値について、具体的に見ていきましょう。

まず「専門家としての信頼獲得」についてです。

Google検索では、E-A-T（専門性・権威性・信頼性）という基準で情報の質が判断されます。これは人間の目から見ても同じことで、専門的な知識が詰まった記事を発信し続けることで、その分野の専門家として認められるようになります。

次に「仲間づくりのきっかけ」です。

良質な情報を発信していると、同じ興味や課題を持つ人々が自然と集まってきます。たとえば、GitHubが運営している技術ブログは、プログラマーたちが活発に意見を交わす場となっています。このように、記事をきっかけに新しいつながりが生まれ、それがさらに大きな価値を生み出していくのです。

3つ目の「社会への貢献」は、より大きな視点での価値です。

単に自社の商品やサービスを宣伝するだけでなく、業界全体や社会に役立つ情報を提供することで、企業としての評価も大きく高まります。

すぐに成果を出すための記事作成術

記憶に残る記事と並んで重要なのが、すぐに成果につながる記事です。

このタイプの記事で成果を出すためには、「課題を抱えている人に、適切なタイミングで情報を届ける」ことが重要です。

特にビジネス向けの記事では、具体的な問題を解決したい人に向けて情報を提供することが効果的です。

たとえば「システム開発の予算の決め方」といった実務的な情報を、予算検討中の担当者に届けることができれば、自然と問い合わせにつながりやすくなります。

ただし、ここで注意したいのが「提案のタイミング」です。

たとえば、記事を読んですぐに「お問い合わせはこちら」と誘導するのは、多くの場合効果が低いものです。まずは無料の資料ダウンロードや、簡単な相談から始めるなど、読者の状況に合わせた段階的な提案を心がけましょう。

検索エンジンとSNSの使い分け方

「検索エンジンは能動的、SNSは受動的」というのは、よく聞く説明です。

しかし、最近のデジタルマーケティングではそれほど単純ではありません。実際、XやInstagramでも「検索」による情報収集が増えており、従来の境界線が薄れてきています。

大切なのは、それぞれの特徴を理解して使い分けることです。

Google検索では、「システム開発の予算の立て方」といった具体的な課題に関するくわしい情報が求められます。一方、SNSでは「システム開発現場の裏側」といった、より親しみやすい話題や視覚的な情報が好まれる傾向にあります。

記事の評価方法を見直す

多くの企業では「PV数(ページの閲覧数)」や「滞在時間」で記事の評価をしています。しかし、これらの指標だけでは、本当の意味での記事の価値は測れません。

たとえば、毎日たくさんの人が読む記事でも、翌日には完全に忘れられているかもしれません。逆に、読者数は少なくても、実務で何度も参照される記事の方が、長期的には大きな価値を生み出すことがあります。

そのため、記事の評価には以下のような視点も加える必要があります。

まず「実務での活用度」です。

読者が実際の仕事で、どれだけその記事を参考にしているかを確認します。コメント欄やSNSでの反応、問い合わせ内容などから、ある程度把握することができます。

次に「情報の独自性」です。

他のサイトには無い、自社ならではの知見や発見が含まれているかどうかをチェックします。表面的な情報の寄せ集めではなく、実践から得られた深い気づきを提供できているかが重要です。

実践的なチェックポイント

良い記事を書くために、執筆前に確認しておきたいポイントをご紹介します。

まず、その記事の目的を明確にすることです。

「すぐに成果を出したい」のか、「じっくりと信頼を築きたい」のか。この2つは、時として相反する関係になることがあります。

たとえば、商品の売り込みを強く意識しすぎた記事は、読者の記憶には残りにくい傾向があります。そのため、記事の目的をはっきりさせてから執筆を始めることが大切です。

次に、読者の気持ちに深く寄り添うことです。

単に「読者が知りたい情報を提供する」だけでは不十分です。なぜその情報を求めているのか、どんな課題を抱えているのか、その背景にある感情まで理解することで、より響く記事が書けるようになります。

そして最も重要なのが、読者との信頼関係を築く姿勢です。

「今月の成果を出すために記事を書く」という短期的な視点ではなく、「読者に本当に価値ある情報を届けたい」という真摯な気持ちで書くことが、結果的に大きな成果につながります。

まとめ　良い記事が生み出す好循環

ここまで、読者の記憶に残る記事の作り方について、くわしく見てきました。良い記事を継続的に発信することで、次のような好循環が生まれていきます。

まず、実務で役立つ情報を提供することで、読者から信頼を得られます。その信頼が口コミを生み、新しい読者を呼び込みます。そして、その読者との対話から新たな気づきが生まれ、さらに良い記事が書けるようになります。

このサイクルを回し続けることで、単なる情報発信の場を超えて、「この分野について知りたければ、このサイトを見れば間違いない」と言われるような、強力な情報発信基地を作ることができるのです。

良い記事を書くことは、決して簡単ではありません。しかし、読者に真摯に向き合い、価値ある情報を届け続けることで、必ず成果はついてきます。

この記事が、皆さんのコンテンツ作りの一助となれば幸いです。

【参考文献】デジタルマーケの成果を最大化するWebライティング(日本実業出版社)

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