似すぎている似顔絵と個人情報保護
クオリティロードWeb制作チームのオッサーです。
先日、とあるお客さまのホームページのリニューアルに関する社内会議で、以下のようなやり取りがありました。
WEBサイトに会社の社長や社員・スタッフの写真や似顔絵を掲載すると、ユーザーに良い印象を持ってもらえる可能性が高まります。似顔絵とニックネームの「社員紹介」を載せることをお客さまにご提案しましょう!
しかし似顔絵は個人情報なので、お客さまはOKを出されないのでは?
いや、個人が特定されるような似顔絵でなければ個人情報には該当しないのでは?
というようなやり取りがあり、お客さまへの「社員紹介」ページのご提案は見送ることになりました。
そんな経緯もあり、今回は、私・オッサーが「似すぎている似顔絵と個人情報保護」について調べたことを、ここに記したいと思います。
なお、当コラムの記載内容に関しては、一切の法的な責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。
「顔」が見えるサイトのメリット
まずは、写真や似顔絵を掲載するメリットに関して。
Googleなどの検索エンジンは、SEOの面で、商品やサービスの内容説明や、価格やスペックなどの情報を重視します。
そのため、これらの情報をしっかりと掲載することはとても重要です。
しかし情報ばかり文字ばかりのページには、ユーザーは、あまり魅力を感じません。
そのページからすぐに離脱してしまうユーザーも多いでしょう。
少しでもページの滞在時間を長くしてもらうには、デザインなどを工夫する必要があります。
また、ホームページに「ひと気」がないと、魅力的に感じなかったり、安心感や信頼感を感じない……ということが起こりがちです。
このことは、「安心感を与えるホームページと「ひと気」の関係」に書かれています。
こちらのコラムでは、企業の「顔」が見えると、ぐっと信頼感や魅力が上がることが書かれています。
ホームページでなくても、例えば、道の駅で販売している野菜の売場に、生産者が顔写真や似顔絵イラストつきで「私が育てました」なんてPOPがあると、妙に信頼感や安心感を感じますよね。
顔写真はもちろん似顔絵イラストでも、「ひと気」を補うことは可能です。
顔写真や似顔絵イラストで、ユーザーが安心感や魅力を感じる「ひと気」を上手に活用することができれば、ユーザーからの反応も得やすくなることでしょう。
と、これだけのメリットがありますが、これほどのメリットがあったとしても、最優先されるべきはお客さまのご意向。
お客さまが似顔絵やお名前を保護するべき個人情報と考え、掲載したくなければ、それらの情報は掲載されるべきではありません。
個人情報に対する感度や基準は、お客さまによって人それぞれ。
次からは、何が個人情報なのか、どこからが個人情報なのかについて、個人情報保護法から、「個人情報の定義」について見てみたいと思います。
個人情報の定義とは
個人情報を定義している「個人情報の保護に関する法律」では、以下のように個人情報を定義しています。
個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)
個人情報の保護に関する法律(平成十五年法律第五十七号)個人情報保護委員会
(定義)
第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
一 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。以下同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)により特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
二 個人識別符号が含まれるもの
(以下略)
かなり読みづらい文章ですが、端的にいうと
特定の個人を識別することができるもの
が、個人情報に該当します。
具体的には、
- 氏名
- 生年月日
などは、その情報のみで個人情報に該当するようです。
また、「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができること」ともあるので、例えば、
生年月日や勤務先、住所など、いくつかの情報を照合することで個人を特定できる情報
も、個人情報となるようです。
「個人識別符号が含まれるもの」とは、例えば、マイナンバーや免許証番号、パスポートの旅券番号など。
また、身体的特徴を符号化した情報も個人情報に該当するようです。
これらのことを踏まえたうえで、“似すぎている似顔絵”が個人情報に該当するのか、検証します。
似すぎている似顔絵は個人情報なのか
結論から書くと、“似すぎている似顔絵”は個人情報とみなされる場合もある……という状況のようです。
厳密にいえば「個人情報」と「肖像権」とでは意味が異なりますが、プライバシーの中に個人情報は含まれるようなので、肖像権やプライバシーに関して争った裁判の判例を参考に書きます。
なお、詳しい裁判内容までは、私・オッサーは法律の専門家ではないのでこちらには書きません。
とある肖像権に関する裁判の判例を見る限り、「人物の容貌などを描写したイラスト画についても写真と同様に肖像権が発生」するものの「描写に作者の主観や技術が反映されるイラスト画は、異なる特質を有しているし、それについて参酌されなければならない」としています。
一方で、“似すぎている似顔絵”と“特徴を強調している似顔絵”では、裁判所は違う判断を示しています。
絵画は、写真及びビデオ録画のように被写体を機械的に記録するものとは異なり、作者の主観的、技術的作用が介在するものであるから、肖像画のように写真と同程度に対象者の容貌ないし姿態を写実的に正確に描写する場合は格別
H14.5.28東京地方裁判所平成12年(ワ)第18782号謝罪広告等請求事件
ではあるものの
作者の技術により主観的に特徴を捉えて描く似顔絵については、少なくとも本件のように似顔絵自体により特定の人物を指すと容易に判別できるときに当たらないときは、似顔絵によってその人物の容貌ないし姿態の情報を取得させ、公表したとは言い難く
H14.5.28東京地方裁判所平成12年(ワ)第18782号謝罪広告等請求事件
としている判例もあります。
【参考】
H14.5.28東京地方裁判所平成12年(ワ)第18782号謝罪広告等請求事件
つまり、似顔絵自体により特定の人物を指すと容易に判別できる場合を除けば、作者が主観的に特徴をとらえて描いた似顔絵は肖像権侵害にはならない……ということのようです。
例えば、左側の人物の似顔絵を作る際、真ん中の、写真をトレースして制作した“似すぎている似顔絵”は個人情報とみなされる場合があり、右側の、主観的に特徴を捉えて描いた“特徴を強調している似顔絵”は個人情報には当たらないようです。
モデルの人物の画像
“似すぎている似顔絵”の例
“特徴を強調している似顔絵”の例
とはいえ、尊重されるべきはお客さまの意思。
個人情報を取り扱う企業は、慎重な行動が求められることでしょう。
今回、似顔絵と個人情報の関係を調べてみて、私・オッサー自身、とても勉強になりました。
しっかりと個人情報保護法を理解したうえで、お客さまのニーズにお応えするご提案をしていきたいものです。
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